
マーケティング部 CRM(兼)サービスデザイン
課長 奈良 純代 氏
SOMPOダイレクト損害保険株式会社は、国内市場向けのダイレクト損害保険会社として事業を展開。主力商品である「おとなの自動車保険」は140万件超(2024年1月時点)の契約数を誇り、約100万人の顧客にサービスを提供している。「デジタルで保険を体験することが当たり前の世界を作り、お客様の豊かな人生の実現をサポートし続ける存在」をミッションに掲げ、保険を「よりわかりやすく、より簡単に」「合理的で納得感のある価格」で提供することを目指す。
■ 設立:1982年9月22日
■事業内容:自動車保険を中心とした通販型(ダイレクト)損害保険の販売
■従業員数:962名(2024年10月1日時点)
SOMPOダイレクト損害保険のマーケティング部は、商品の認知・集客からWebでの接点において心地よい体験を提供し、契約に繋げること、そして契約いただいたお客様の継続の促進をミッションとしている。このミッションを達成するため、同部門はマーケティングのプロセスに沿って「プロモーション」「デジタルコミュニケーション」「CRM」「サービスデザイン」4つのグループで構成される。
そのなかでもCRMグループは、契約中のお客様に対し、マイページでのWeb接客やメール・LINE、郵送物を通じた情報提供、満期更改時期のアプローチなどを実施する。保険契約の継続率向上を主要指標として掲げ、1年間の契約期間中に「次も『おとなの自動車保険』を契約したい」とお客様に思っていただける体験を構築するというグループミッションのもと、顧客価値の最大化に励んでいる。
同社では、以前から株式会社セールスフォース・ジャパン(以下、セールスフォース社)が提供する「Marketing Cloud Engagement」と「Marketing Cloud Personalization(以下、Personalization)」を利用してマーケティング活動をおこなってきたが、顧客体験をさらに向上させるため、2023年6月にセールスフォース社とtoBeマーケティングが共同プロジェクトで提供するPersonalization活用支援プロジェクトがスタート。同社マーケティング部 CRM(兼)サービスデザイン課長 奈良 純代 氏にPersonalization活用支援の導入背景と導入後の効果について話を伺った。
奈良氏によると、同社では契約継続率の向上のため、より細かな顧客データの活用を目指していた。すでにMarketing Cloud Engagementを活用し、メールの開封・クリック状況といった行動履歴や、契約満期日などのデータに基づいたアプローチはおこなっていたものの、さらに踏み込んだデータを掛け合わせたシナリオ構築が必要だと考えていたという。
特に課題となっていたのが、閲覧履歴などWeb上での行動データの活用だ。既存のWeb接客ツールでは「このページを見たお客様にはこのポップアップを表示する」といった単純なシナリオは可能だったが、行動データと契約データの連携ができず、年代や契約内容などのお客様情報と紐付けた提案をおこなうことができなかった。「 Marketing Cloud Engagementと併せPersonalizationも2021年から導入していたものの、データ連携の部分は十分に活用できていませんでした」と奈良氏は話す。使用ツールのなかで、契約データを取得しているのはMarketing Cloud Engagementのみであり、Personalizationに契約データを連携することで、WEB行動履歴と紐づけることができるためにサイト情報を一つ一つ設定することが強みである。
そのため、お客様の契約内容(満期日前、クロスセルの状況など)を判断した上でしかるべき提案をしていくには、Marketing Cloud EngagementとPersonalizationを掛け合わせて活用していくのが最適解だと考えた。
しかし、Personalizationの活用には専門的な知識が必要だと感じており、導入時点ではどういった機能があるのか把握しきれていなかった。奈良氏は、当時について「お客様にご提供したいシナリオはイメージできても、具体的に顧客体験全体を描き、それを実装することが自社だけでは難しい状況でした」と話す。
同社が目指していたのは、メールの行動履歴、お客様情報、Web上の行動データを掛け合わせ、より実質的にお客様のお悩みに沿った情報提供をメール配信やWeb接客で実現することだった。

そこで同社は「Marketing Cloud Engagementの活用」をテーマに複数社に提案を依頼。そのなかで、セールスフォース社とtoBeマーケティングの共同提案を受け、Personalizationの新たな活用の可能性に気づくこととなった。
決め手となったのは、toBeマーケティングの持つ実績と専門知識だ。「Personalizationは国内での導入事例がまだ多くなく、参考にできる情報が限られています。しかし、toBeマーケティングは具体的な活用例や画面イメージを提示し、他社にない踏み込んだ提案をしてくれました」と奈良氏。
継続率に関わる要素は多岐にわたるため、お客様の契約・行動データを細かくセグメントし、それぞれに最適なカスタマージャーニーマップを描く必要がある。toBeマーケティングの提案は、まさにそのニーズに応えるものだった。
実際の画面や活用例を通じて「一人のお客様の行動に対してここまで深く分析し、きめ細やかに提案できる」というビジョンと、toBeマーケティングの確かな実装スキルが実感でき、理想の実現への手応えを感じたという。
導入決定後は、3カ月間のコンサルティング期間と6カ月間の実装期間を経て、施策を順次リリース。20〜30の施策案のうち、継続率への貢献度や予算の観点から優先順位を決めて実装を進めていった。奈良氏は、導入時について次のように振り返る。「toBeマーケティングは、セールスフォース社と、以前からMA構築・運用を依頼している他社ベンダーとも密に連携を取り、今後の継続的な運用も見据えた実装を伴走支援してくれたので、非常にスムーズでした。」
Personalizationを活用した施策を実行した結果、お客様の状態に応じたきめ細やかな提案が可能になり、契約継続率の向上を実現。6カ月間で12のシナリオを構築・実装し、これまで分断されていた契約データとWeb行動データを組み合わせることで、セグメントの精緻化に成功している。
特に効果が顕著だったのが、満期更改時の施策だ。更改後の保険料が上がる見込みのお客様が、見積もりの試算画面を閲覧したものの継続に至らなかった場合には、メールによるフォローで保険プランや支払い方法の変更を提案した。この施策を初回継続のお客様の半数に実施したところ、実施しなかった場合と比較して継続率が1.4%高くなった。
「おとなの自動車保険」は1カ月に全体で約10万件の契約更改がある。このことを考えると、1.4%の継続率上昇は収益に大きなインパクトをもたらす。奈良氏は「0.1%の変化でも影響が大きいなかでの1%以上の向上は、非常に大きな効果」と評価しており、現在では全顧客層への展開を進めている。
Salesforceで保持しているより多くの情報をもとに、お客様にそれぞれにパーソナライズされたシナリオの実装が可能になったこれらのデータはコンタクトセンターとも共有されており、Webの閲覧履歴やメール開封率などを顧客対応にも活用することで、さらなる継続率向上の相乗効果が期待できる。
また、お客様からの反応にも変化があった。メールの送信頻度や内容に関する不満が、大幅に減少したのだ。以前はクロスセルの施策として、細かなセグメント分けをせず、大きな母数に対して別商品の案内を一律に送信していた。そのため、その情報を必要としていないお客様からは「メールが多い」という不満の声が寄せられていたという。
しかし現在では、ヒアリングアンケートの結果や閲覧履歴に基づいて、お客様の興味関心に合わせた提案ができるようになり、逆に「タイミングよく役立つメールを送ってくれる」という評価を得られるようになった。
このように、Personalizationの活用により同社が目指す「心地よいデジタル体験」を構築し、安心して保険サービスを受けられる顧客体験を実現することができた。


同社は今後、Personalizationによる施策の数をさらに増やし、顧客体験の一層の向上を目指す。
また、いずれはPersonalizationに限らず、データプラットフォームと連携した包括的なデータ活用も検討しているという。
奈良氏は「現時点では計画していた施策の一部しか実施できておらず、理想とするデジタル体験の実現に向けてはまだ道半ばの状態です。お客様の状態をより詳細に把握するための分析を続け、現状では十分にアプローチできていないお客様に対する提案も進めていきます」と展望を語る。
お客様にご体験いただきたいデジタルの世界観をさらに高度化していくため、同社は今後もtoBeマーケティングとの協業を続けながら、新たな施策の実現に取り組んでいく。
※本事例の各種情報は、2024年12月時点のものとなります。