
Salesforce CDP(Data 360)とは?機能・導入で失敗しないデータ設計を解説
「Salesforceに顧客情報はたまっているのに、マーケティングにうまく使えていない」
「Webサイト、MAツール、営業管理システムに情報が散らばっていて、顧客の全体像が見えない」
こうした悩みを抱えている企業は少なくありません。営業は商談履歴を、マーケティングはWeb行動やメールの反応を、それぞれ別のシステムで見ている。どちらも同じ顧客のデータなのに、つながっていないせいで「この人はいま、どこまで検討が進んでいるのか」が誰にも分からない――そんな状態です。
この分断を解消するための仕組みが、Salesforce CDPです。複数のシステムに散らばった顧客データを一つにまとめ、営業・マーケティング・カスタマーサポートで共通して使えるようにする基盤で、現在は「Data 360」という名称で提供されています。
本記事では、Salesforce CDPの仕組みや機能、導入メリットといった基本をおさえたうえで、Salesforceの構築・運用を支援している立場から「導入しても成果が出ないのはなぜか」「AI活用を見据えてデータをどう設計すべきか」まで踏み込んで解説します。
toBeマーケティング株式会社では、Agentforceの真価(高度な自動化や外部データ連携)を発揮させるためのData 360の機能を最大限に活用し、設定・開発・運用レクチャーのご支援を提供いたします。また、運用開始後もサポートさせていただきます。
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Salesforce CDPとは?Data360との関係
CDPの基本的な仕組み
CDPは「Customer Data Platform(カスタマーデータプラットフォーム)」の略で、社内のさまざまなシステムにある顧客データを集めて統合し、分析や施策に活かすための基盤を指します。
企業の中には、思っている以上に多くの場所に顧客データが眠っています。Salesforceに登録された顧客情報や商談履歴、Webサイトの閲覧履歴や資料ダウンロード履歴、MAツールのメール開封・クリック履歴、ECサイトの購買履歴、そしてカスタマーサポートへの問い合わせ履歴。これらがバラバラに管理されていると、顧客の行動を横断的に追うことはできません。
Salesforce CDPは、こうしたデータソースを接続し、同じ顧客に関する情報を一人分のプロファイルとしてまとめます。たとえば「Webで商品を見た → 営業と商談した → 購入した」という一連の流れを、別々の出来事ではなく一つの顧客体験として捉えられるようになるわけです。

ただし、つなげば自動的にすべてが紐づくわけではありません。顧客IDやメールアドレスといった識別情報をどう扱うか、どの部門がどのデータを使ってよいか、どんなルールで統合するか。こうした設計が欠かせない点は、最初に押さえておきたいポイントです。
Salesforce CDP・Data Cloud・Data 360の違い
Salesforce CDPについて調べると、「Salesforce CDP」「Data Cloud」「Data 360」と複数の名前が出てきて混乱しがちです。結論から言えば、これらは同じ製品系統の名称が、機能の拡大にあわせて変わってきたものです。主な変遷は次のとおりです。
時期 | 名称 | 位置づけ |
|---|---|---|
2019年 | Customer 360 Audiences | マーケティング向けの顧客データ基盤として登場 |
2021年 | Salesforce CDP | 顧客データの統合とマーケティング活用が中心 |
2022年 | Marketing Cloud Customer Data Platform / Salesforce Genie | Marketing Cloud配下の名称を経て、Dreamforce 2022でGenieとして発表 |
2023年 | Data Cloud | マーケティングに限らず、Salesforce全体でのデータ活用へ役割を拡大 |
2025年10月〜 | Data 360 | Dreamforce 2025で発表された現在の名称。AgentforceなどAIが企業データを使うための基盤に |
つまり、いま「Salesforce CDP」の導入を検討するなら、実際に確認すべきなのはData 360の機能と料金体系です。古い名称のまま情報を集めると、仕様や価格が現在と異なる記事に当たることもあるので注意してください。
Sales Cloud・Marketing Cloudとの違い
よく混同されるのが、Sales CloudやMarketing Cloudとの関係です。役割を整理すると、次のようになります。
製品 | 主な役割 | 活用例 |
|---|---|---|
Sales Cloud | 営業活動・顧客・商談の管理 | 商談管理、営業活動の可視化 |
Marketing Cloud | マーケティング施策の実行 | メール配信、顧客コミュニケーション |
Data 360 | 複数システムのデータ統合・活用 | 顧客ID統合、セグメント作成、AIへのデータ提供 |
ざっくり言えば、Sales Cloudは「営業の記録」、Marketing Cloudは「施策の実行」、Data 360は「その両方をつなぐデータの土台」です。Sales Cloudの商談情報とMarketing Cloudのメール反応をData 360で統合すれば、顧客の検討状況に合わせた施策が打ちやすくなります。製品を単体で使うより、目的に応じてデータを連携させることで真価を発揮します。
Salesforce CDP(Data 360)でできること|5つの主要機能
① 分散した顧客データの統合
もっとも基本となるのがデータ統合です。Salesforce製品だけでなく、外部のデータベースやWebサイト、ECシステムなどのデータも接続できます。営業はSales Cloud、マーケティングはMAツール、サポートは別の管理システム、というように部門ごとにツールが違う企業でも、必要なデータをまとめることで部門横断の分析が可能になります。
② 顧客IDの統合(名寄せ)
複数のシステムを使っていると、同じ顧客が別々のIDで管理されていることがよくあります。Salesforceでは顧客ID「A001」、ECサイトでは会員ID「B123」、MAツールではメールアドレス――といった具合です。
Salesforce CDPでは、あらかじめ設定した照合ルールに基づいて同一人物の情報を結びつけ、統合顧客プロファイルを作成します。購買履歴、Web行動、商談履歴を一人の顧客の情報として見られるようになるのが大きな変化です。ただし統合の精度は、元データの品質と照合ルールの設計次第。ここが導入の成否を分ける部分でもあります。

③ 顧客行動に基づくセグメント作成
統合したデータを使えば、条件を組み合わせて顧客をグループ分けできます。「過去30日以内にWebサイトを訪れたが、90日間購入がない顧客」や「商談は進んでいるのに、しばらく接触が途絶えている顧客」など、単一のシステムでは見つけられなかった層を抽出できるのが強みです。
④ マーケティング施策への活用
作ったセグメントは、連携先のマーケティングツールで施策に使えます。購入直後の顧客には関連商品を案内し、しばらく購入のない顧客には再購入を促す、といった出し分けが代表的です。営業と連携させれば、特定の行動を示した顧客に担当者がすぐアプローチする仕組みも作れます。
⑤ AgentforceなどAIとの連携
活用範囲はマーケティングにとどまりません。現在のData 360は、AgentforceなどのAIが企業データを参照するための基盤としても位置づけられています。たとえばAIエージェントが商談履歴や問い合わせ履歴を参照し、顧客の状況を踏まえた回答や業務支援を行う、といった使い方です。とはいえ、AIの回答品質は参照するデータの質や権限設定、AI側の設計にも左右されます。データをつなげばAIが賢くなる、という単純な話ではありません。
Salesforce CDP(Data 360)を導入する3つのメリット
① 部門間の情報の分断がなくなる
営業・マーケティング・サポートが別々のシステムを使っていると、部門ごとに「顧客像」がずれていきます。共通の顧客データを見られるようになれば、施策の議論も同じ前提で進められます。営業担当者が過去の問い合わせ内容を把握したうえで商談に臨めば、提案の精度も上がるはずです。
② 顧客の状況に合わせたコミュニケーションができる
同じ商品に興味を持っている顧客でも、初めてサイトに来た人と、すでに商談中の人とでは、必要な情報はまったく違います。属性だけでなく購買履歴やWeb行動まで組み合わせて見られるようになると、「全員に同じメール」から「検討段階に合わせた情報提供」へと切り替えられます。
③ AI活用の土台が整う
AIを業務で使うなら、AIが何を参照できるか、そのデータがどれだけ正確かが重要になります。CDPで顧客データを整理しておくことは、AI活用の前提条件づくりでもあります。ただし繰り返しになりますが、統合しただけでAIの精度が自動的に上がるわけではない点には注意が必要です。
Salesforce CDP(Data 360)の活用例
活用の仕方は業種や課題によって変わります。ここでは製品機能をもとにした、代表的な3つの想定ユースケースを紹介します。
活用例① Web行動×商談情報で進めるBtoBマーケティング
BtoBでは、顧客がWebで情報収集をしてから営業と商談するのが一般的です。たとえば、ある企業の担当者が製品資料をダウンロードした後、料金ページを何度も見ていたとします。この動きとSalesforceの商談履歴を合わせて見れば、営業は顧客の関心を踏まえたアプローチを考えられます。逆に、すでに商談が進んでいる顧客に初回検討者向けのメールを送り続けてしまう、といったちぐはぐな対応も防ぎやすくなります。
活用例② 購買履歴を使ったリピート促進
ECサイトなら、購買履歴と閲覧履歴の組み合わせが効きます。定期的に買っている顧客には次の購入時期に合わせて情報を届け、購入頻度が落ちてきた顧客には再購入を促す。大事なのはセグメントを作って終わりにせず、施策後の購入率や売上への影響まで検証することです。
活用例③ 問い合わせ履歴を活かした顧客対応
サポートへの問い合わせも、営業やマーケティングにとって貴重なデータです。過去に製品トラブルで問い合わせてきた顧客に、営業がその事情を知らないまま追加提案をしてしまう――これは顧客の信頼を損ねかねない場面です。情報を連携しておけば、過去の対応状況を確認したうえで、配慮のある提案ができます。
Salesforce CDP(Data 360)を導入しても成果が出ない4つの原因
多様なデータを統合できるのがCDPの魅力ですが、入れただけで成果が出るわけではありません。構築・運用の観点から、つまずきやすいポイントを4つ挙げます。
① データ統合そのものが目的になっている
もっとも多い落とし穴がこれです。Salesforce、MAツール、ECのデータをきれいに統合できても、そのデータで何を改善するのかが決まっていなければ成果にはつながりません。「休眠顧客の再購入率を上げたい」「商談化率を改善したい」といった目的を先に決め、そこから逆算して必要なデータを選ぶのが正しい順番です。
② そもそもSalesforceに必要な情報がたまっていない
Salesforceを使っていても、担当者によって入力内容がばらばらだったり、商談履歴が十分に残っていなかったりするケースは珍しくありません。進捗ステータスは入っていても、顧客の課題や失注理由が記録されていなければ、マーケティングに使える情報は限られます。CDPを検討する前に、Salesforceの入力項目や運用ルールを見直すことも大切です。
③ 顧客IDの統合ルールが甘い
同一顧客をどう識別するかは、統合の要です。メールアドレスだけで照合すると、アドレスの変更や共有アドレスの利用によって正しく結びつかないことがあります。反対に、別人を同一人物として統合してしまうリスクもあります。データの特性を理解したうえで照合ルールを設計する必要があります。
④ 導入後の運用担当が決まっていない
CDPは導入して終わりではなく、データ品質の管理、セグメントの見直し、施策の効果検証が続きます。マーケティング部門だけに任せるのではなく、営業や情報システム部門も含めて役割を明確にしておくことが重要です。
導入前に確認したいデータ設計チェックリスト
製品の機能を比べる前に、まず自社のデータ環境を把握しておくことをおすすめします。次の項目を確認してみてください。
確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
データの所在 | 顧客データがどのシステムにあるか把握しているか |
顧客ID | 複数システムの顧客を紐づける識別情報があるか |
データ品質 | 重複・欠損・古い情報の状況を把握しているか |
データ更新 | 必要な更新頻度を整理できているか |
活用目的 | 統合後に実施する施策が決まっているか |
KPI | 商談化率や購入率などの評価指標が設定されているか |
権限・同意 | データの利用目的やアクセス権限を整理できているか |
運用体制 | データ管理や施策実行の担当者が決まっているか |
最初からすべてが整っている必要はありません。ただ、これらを確認しないまま構築を進めると、導入後にデータの追加や設計変更が発生しやすくなります。突き詰めれば、「何のために、どのデータを、どう使うのか」がはっきりしているかどうかに尽きます。
Salesforce CDP(Data 360)が必要な企業・まだ必要ない企業
CDPは多くのデータを扱える製品ですが、すべての企業に必要なわけではありません。判断の目安を整理しました。
CDPの導入を検討する価値がある | 既存のSalesforce改善を優先した方がよい |
|---|---|
顧客情報が複数のシステムに分散している | 営業活動の入力漏れを減らしたい |
営業とマーケティングの情報を横断的に使いたい | 商談管理を効率化したい |
Web行動と購買履歴を組み合わせて分析したい | Salesforce内のデータをダッシュボードで可視化したい |
AI活用に向けて企業データを整備したい | そもそもSalesforceの入力ルールが定まっていない |
右側に当てはまる場合は、まずSales Cloudの設定や入力ルール、レポート機能を見直した方が早く効果が出る可能性があります。既存製品で解決できる課題と、複数システムの統合が本当に必要な課題を切り分けることが、遠回りしないためのコツです。
AI活用を見据えたデータ設計の考え方
CDPの導入を検討する企業の多くが、その先にAI活用を見ています。ただ、AIのために大量のデータを集めればよいかというと、そうではありません。出発点は「AIに何を判断・実行させたいのか」を決めることです。
たとえば、AIに営業担当者の次のアクションを提案させたいとします。企業名や業種だけでは、まともな提案はできないでしょう。商談の進捗、過去の接触履歴、顧客の課題、Webでの行動といった情報が判断材料になります。AIに期待する役割によって、必要なデータは変わるのです。
AIに期待する役割 | 必要となるデータの例 |
|---|---|
商談の優先順位を提案する | 商談履歴、活動履歴、顧客属性 |
顧客に適したコンテンツを提案する | Web行動、メール反応、商談状況 |
問い合わせ対応を支援する | 問い合わせ履歴、契約情報、製品情報 |
解約リスクを分析する | 利用状況、契約更新履歴、問い合わせ履歴 |
目的からデータを逆算すれば、必要以上に複雑な統合を避けられます。なお、表のデータをそろえれば各AI機能がそのまま実現するわけではなく、AIモデルやAgentforceの設定、評価方法も別途検討が必要です。
もう一つ大事なのは、量より質と使いやすさです。誤りや欠損の多いデータでは期待した回答は得られませんし、情報があってもAIが参照しやすい構造になっていなければ活かせません。データモデル、更新頻度、アクセス権限まで含めて設計し、将来使う可能性のあるデータも見据えながら段階的に基盤を整えていくのが現実的です。
導入の進め方と費用
導入の5ステップ
Salesforce CDPは、一気に全データを統合するよりも、小さく始めて広げる進め方が向いています。おおまかな流れは次の5段階です。

ステップ1:導入目的とKPIを決める
解決したい課題と、成果を測る指標を明確にします。
ステップ2:既存データを棚卸しする
Salesforceや外部システムにあるデータの種類、品質、管理方法を確認します。
ステップ3:データ統合と顧客IDを設計する
連携方法、統合ルール、データモデルを設計します。
ステップ4:小さな施策で効果を検証する
特定のユースケースに絞って、活用効果を確かめます。
ステップ5:対象を広げ、運用を改善する
検証結果を踏まえて、対象データや施策を段階的に広げます。
導入費用の考え方
Data 360の費用は、契約内容や利用する機能、データの処理量によって変わります。また、製品の利用料だけでなく、外部システムとの連携、初期構築、データ設計といった費用も見込んでおく必要があります。具体的な金額は、Salesforceの最新の料金情報を確認したうえで、自社の目的とデータ環境に応じた見積もりを取るのが確実です。
よくある質問
Q. Salesforce CDPとData Cloudは同じものですか?
同じ製品系統です。Salesforce CDPは以前の名称で、その後Data Cloudを経て、2025年10月からData 360という名称で提供されています。名称の変化とともに、役割もマーケティング向けの顧客データ統合から、企業全体のデータ活用やAI連携へと広がっています。
Q. Salesforce CDPとMarketing Cloudの違いは何ですか?
Salesforce CDP(Data 360)は顧客データを統合・活用するための基盤、Marketing Cloudはメール配信などの施策を実行するための製品群です。両者を連携させることで、統合した顧客情報を施策に活かせます。
Q. Sales Cloudだけでも利用できますか?
Data 360はSales Cloudと連携できますが、具体的な利用方法や必要な契約は構成によって異なります。Sales Cloudのデータだけを使う場合でも、実現したいことに照らして導入の必要性を検討することが大切です。
Q. 導入には専門知識が必要ですか?
基本設定に加えて、データ連携、顧客ID統合、データモデル設計、アクセス権限などの知識が必要になる場合があります。複数システムを連携させるなら、データ設計やSalesforce構築に詳しい担当者が関わることをおすすめします。
Q. 中小企業にも必要ですか?
企業規模だけで決まるものではありません。顧客データが複数のシステムに分散していて、統合によって明確な業務改善が見込めるなら検討する価値があります。既存のSalesforce機能で解決できる課題であれば、そちらを優先するのも賢い選択です。
まとめ|成果を左右するのはデータ設計と運用
Salesforce CDP(現在のData 360)は、複数のシステムに散らばった顧客データを統合し、営業・マーケティング・カスタマーサポートで活用するためのプラットフォームです。顧客理解の深化、施策の改善、AI活用の土台づくりと、使い道は幅広くあります。
ただし、データを統合すること自体はゴールではありません。統合したデータで何を実現したいのかを決め、それに合わせてデータ設計と運用体制を整えること。これが、Salesforce CDPを「入れただけ」で終わらせないための一番のポイントです。
Salesforceの構築・活用でお困りではありませんか?
「Salesforceにデータはあるのに、うまく活用できていない」
「CDPを検討しているが、どのデータを統合すべきか分からない」
「将来のAI活用に向けて、データ環境を整えておきたい」
こうしたお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。当社では、SalesforceやData 360の初期構築からデータ設計、運用・活用支援までを一貫してお手伝いしています。現在の課題とデータ環境を整理したうえで、目的に合った活用方法をご提案します。










