デジタルマーケティングが抱える矛盾・ジレンマ②
2017.05.01
2023.08.03
前回のおさらい
今回の投稿は、前回の記事から連載されています。
おさらいは下記の通りです。
『デジタルマーケティングが抱える矛盾とジレンマ』
/pardot_blog/digital_marketing/201703271457.html
(まとめ)
- 前回はMAが導入されていない環境における『デジタルマーケティングが抱える矛盾』について
お伝えしました - "矛盾"とはデジタルマーケティングで実施するPDCAにおいて、PlanおよびDoが"人(属性)"軸で
設計されていることに対し、CheckとActionは"セッション"軸で実施されてる点です - これを踏まえ、MAが導入されているPDCA環境では、一貫して"人"軸でデータを取れているので
論理上はこの矛盾を解決し、導入されていないPDCA環境は、個人を特定しないデータに基づき
PDCAを回すことになります - 言い換えると仮説のデータを使い仮説検証型の施策を行うということ。仮説×仮説になるので
最適化に時間の無駄と限界があるのではないか?と課題提示しています。
デジタルマーケティングが抱えるジレンマとは?
前回は、『デジタルマーケティングが抱える矛盾』についてお伝えしました。
これは、MAを導入することにより、"誰が"いつWEBサイトを訪れているか?が可視化されるので、
論理上この矛盾は解決するということです。そして今回はこの矛盾を解決した後に訪れる
『デジタルマーケティングが抱えるジレンマ』についてお伝えしていこうと思います。
※なお、今回までが課題提起で次回以降が解決策の提示です。
ジレンマとは何か?これは一言でいうと
"データ細分化による検証と改善 (CheckとAction) 難易度の急上昇"
です。
セッションベースのデータは、良くも悪くも塊として見えていました。「新規 or リピーター」などです。
それがMAが導入されることにより、人が塊としてのデータではなく1人1人の行動データとして
トラッキングすることが可能になりました。1to1マーケティングという理想論が、テクノロジーの進化
により実現できるようになったということです。(これはよく言われていることですね)
MAの一般的な普及により、今まで束ねられていたデータが、1人1人の行動履歴データとして
可視化・細分化されるようになりました。
一方その副産物(ジレンマ)として、マーケティング担当者は多大なる問題を抱えることになります。
問題は大きく2つです。
- データが細分化されすぎて、全体の傾向がわからない
- 標準的なKPIが存在しない
です。
以下、詳しくご説明していきます。
1.データが細分化されすぎて、全体の傾向がわからない
これはわかりやすい問題だと思います。
これまで例えば「新規ユーザー」という塊で見ればよかったものが、「新規ユーザー」でも
Aさんの場合、Bさんの場合と別々の属性を持ったデータが存在することになります。
かつMAはそういったデータを収束し、傾向としてレポートしてくれる訳ではありません。
簡単に整理するとMAがなかった時代と、MAだけの検証環境は以下のような状態です。
要するに全体傾向が分からなくなるのですが、それにより何が起こるか考えてみましょう。
みなさん、例えばMAでシナリオやオートメーションを設定するときに
以下のような問題にあたることはありませんか?
『せっかくMAを入れたのに何をしていいか分からない...何からすればいいかも分からない』
この原因は色々あります。当然、MAの設定の仕方が分からないという理由もあると思います。
ただし、仮に操作を全て覚えたからといって本当に何をすればいいか判断ができるでしょうか?
カート落ちした人を特定してリテンションしたい、
休眠を掘り起こしてリードジェネレーションしたいなどは、判断できると思います。
それはMAがあってもなくても「課題が顕在化」しているからです。
ただし、既に見えている課題を解決したあと、次に何をすべきか判断できるでしょうか?
多くの方は難しいと思います。
この問題が起きるのは、MAが全体を俯瞰してくれるツールではないので、「潜在的な課題」は
発見することができないからです。また、それと同時に課題2の問題も併発します。
2.標準的なKPIが存在しない
セッション情報をベースにしたデジタル広告やWebサイト改善が主流の時代はKPIがシンプルでした。
広告であればKPIは「表示回数」「クリック数」「CTR」「CPC」「CVR」「CPA」「品質スコア」、
Webサイトであれば「セッション数」「直帰率」「滞在時間」「平均PV」「CVR」などでしょうか?
物を買うなど、何かしらコンバージョンしてくれる可能性を上げるためには
このKPIを改善すればいいよ、と偉大な先人たちはサービスを通して教えてくれていました。
難易度はあれどKPIは固定化されていました。
ただしMAは違います。1to1でデータが蓄積されるため、「新規購入」の促進にも使えるし、
「解約阻止」「休眠掘り起こし」など幅広いシーンで使えます。
こうなると難しいのは検証(レポーティング)です。
「新規購入」と「解約阻止」が同じKPIで測れるでしょうか? 難しいですね。
これを行うには以下のスキルが求められます。
- 「新規購入」「解約阻止」など施策に応じて自身でKPIを設定する
- 1to1のデータの中から施策に応じたデータだけを抽出する
- 抽出したデータをBIなどで集計する
- 集計したデータをグラフ化し、KPIが良いか悪いか判断する
- 課題があれば、それを改善するための施策をA/Bテスト設計・実装する
などです。これができる人は業界でも希有のためご安心ください(笑)
よって、今回のお話を整理すると以下の通りです。
まとめ
今回のまとめは非常に簡単です。
(まとめ)
MAの登場によりデジタルマーケティングのPDCAは
論理的には矛盾なく可能になったが、現実的にそれを行うための
CheckとActionのツール・環境はテクノロジーが追いついていない
です。
次回、弊社ではこの問題に対し、どのような解決策を取っているかをご説明していきます。